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EXHIBITION 2/26-3/14 | 木戸孝子写真展 『The Unseen』

 

木戸孝子写真展 『The Unseen』

[時間]2022年2月26日(土)-3月14日(月)

火曜休館 11:00-18:00

[会場]MARUTE GALLERY

The Unseen

大地震が起こり、大津波が来たのは、2011年3月11日。夫の故郷の仙台市に住み始めて約2年が経った頃だ

った。義父母の無事を確かめ、水をもらう列に3時間並んだ。食料の調達もしなければならなかった。写真を

撮りに行こうなんて、考えもしなかった。

そんな中、高知新聞社から撮影を頼まれたけれど、車を持っていない。ところが、友人のフォトグラファー、クリ

ストフ・バンガートが、成田空港から私の自宅まで車で来て、タイミング良く条件がそろった。もしかして行かな

ければならないのかもしれない。

「君はここの人だから、外国人の僕より辛い思いをするだろう。でも、自分が住む場所で起こった事だからこそ

見ておくべきだよ。まず明日一緒に行って、もし耐えられなかったらやめればいい」。彼の言葉で心が決まった

3月15日、津波の被災地に入ったけれど、最初は何を撮ればいいのか、ここで写真を撮っていいのかどうかさ

えわからなかった。全ての物が破壊され、水の力で街がなくなっていた。ガレキと悲しみしか見いだせなかっ

た。ただ、祈りながらシャッターを切った。

夜、マンションに帰ると、まだガスが戻らずお湯が出ない。寒さが厳しい東北の3月に、水シャワーを頭から浴

び、被災地に舞うガレキのホコリを洗い流す。あの光景をいったん見たら、自分たちの状況にもう何も文句は

ない。明日も撮影に行こう。そこから、2012年9月に初めての子供を出産する2週間前まで、被災地の撮影を

続けた。

そのうちに、季節がめぐるのを見た。初夏には海から心地よい風が吹き、ここはどんなにか気持ちの良い場

所だっただろう、と想像せずにはいられない。梅雨明けの日には、海もガレキも真っ赤な夕日に包まれた。き

れいだった。目の前にあるのは破壊されたものばかり。ガレキの山は大きくなり続けていたけれど、そこには

、“壊せない美しいもの”が確かにあった。

“エネルギーは、壊されることも創られることもない。ただ形を変えて存在し続ける。”

– エネルギー保存の法則 –

という事は、ここは、津波で突然命を奪われた人々のエネルギーに満ちているのだろうか。体はなくなっても、

生命のエネルギーは形を変えて、私たちと一緒にいるのだろうか。私は、歩き回りながら、とり残されたものの

中に、海や空の光の中に、そして自分の日常の中に、彼らがいたことを、今もいることを、感じたいと願いなが

ら撮影を続ける。

“生きていたあなたは、死んだあなたへと生まれ変わり、私のもとへと再び帰ってくる。あなたは消滅するので

はなく、死者として静かによみがえってくるのだ。”           - 森岡正博 「生者と死者をつなぐ」より

 

 

【トークイベント】

2022年3月13日(日) 14:00-

 

”見えないものを追いかけて”
高橋淳子が聞き手となり、木戸孝子が作品について話し、今回展示の作品The Unseenを読み進めていきます。その他、これまで撮ってきた他の作品の話、写真新世紀の話、などを予定しております。写真家本人による作品の説明で、より深く展示を堪能できるまたとない機会となるでしょう。
聞き手:高橋淳子 プロフィール
千葉県生まれ。
1991年に発足された新人写真家発掘育成支援を目的とする写真コンテスト「写真新世紀」をディレクションし、今回、The Unseenの制作に関わる。
自身の活動として、中村ハルコさんの写真集「光の音」(フォルマーレ・ラ・ルーチェ、2008年)の制作に携わる。

 

 

 

 

 

 

 

木戸孝子 TAKAKO KIDO

1970年、高知県生まれ。

創価大学経済学部卒業後、プロラボ勤務を経てフリーランスフォトグラファーとして独立。

2002年渡米。

2003年、ニューヨークのInternational Center of Photography卒業。

その後、ニューヨークで、B&Wプリンター、リタッチャー、高知新聞への連載などを行いながら、自身の作品制作、発

表を行う。2008年、日本に帰国。

現在、宮城県仙台市に在住し、国内外で個展、グループ展、スライドショーに参加し、作品の発表を行う。

受賞歴

2021 Lucie Foundation Scholarship Program エマージングアーティスト 佳作

17 th Julia Margaret Cameron Award カルチャー&デイリーライフ部門 1位

2021 Photolucida Critical Mass 2021 Top 50 Photographers

2020 Photolucida Critical Mass 2020 Top200 ファイナリスト

2014 ND Awards 2014 ファインアートランドスケープ佳作

2010 5 th Annual Black & White Spider Awards ファインアート2位

2009 PX3 2009 Competition, PRIX DE LA PHOTOGRAPHIE PARIS 佳作

2007 Newspace Center for Photography, 3 rd Annual National Juries Exhibition 3位

1998 第17回キヤノン写真新世紀 佳作

主な展示会

2021 東京都写真美術館、”写真新世紀2021、歴代受賞者によるスライド&トークショー”、東京都

Foley Gallery、”The Exhibition Lab Exhibition 2021”、アメリカ、ニューヨーク、グループ展

中本誠司現代美術館、”The Unseen”、宮城県、個展

2018 Gallery 5610、“Art Photography Asia展“、東京都、グループ展

2016 プロモアルテギャラリー、“Art Photography Asia展“、東京都、グループ展

2014 アトリエKASUGA、 “Art Photography Asia展“、静岡県、グループ展

2013 吉田町ギャラリー “Art Photography Asia展“、神奈川県、グループ展

2012 インスタイル・フォトグラフィー・センター、“Living With Photography展”、東京都、グループ展

NOAM Gallery、“Cheer Up! Japan” 東日本大震災追悼写真展、韓国 ソウル、招待展示

せんだいメディアテーク “写真新世紀仙台展2012”、宮城県、招待展示

伊豆高原ミュージアム、”モノクローム”、静岡県、グループ展

フォトキナ2012、”生きる -Post Tsunami-“、ドイツ、ケルン、公募展

仙台市博物館、“生きる” 宮城県、公募展

カロスギャラリー、“The Ordinary Unseen –Tohoku展”、宮城県、個展

2011 カロスギャラリー、宮城県、ギャラリー・コレクション展

2010 インスタイル・フォトグラフィー・センター、“広尾アートフォトマーケット”、東京都

カロスギャラリー、“The Ordinary Unseen展”、宮城県、個展

2008 Newspace Center for Photography、“2007 Juried Exhibition Winners展”、アメリカ、オレゴン、受賞者3人展

2007 Perkins Center for The Arts、“Photography26展”、アメリカ、ニュージャージー、公募展

Studio 6 Gallery、“Town&Country展”、アメリカ、ニューヨーク、公募展

Silvermine Gallery、”Spectra ’07 National Photography Triennial展”、アメリカ、コネチカット、公募展

Newspace Center for Photography、”Among Us And Curious展”、アメリカ、オレゴン、公募展

2006 Rowe Chiropractic Offices、”Things Past展”、アメリカ、ニューヨーク、個展

2004 Lumiere Gallery、”New Work From New York”、フィリピン、マニラ、グループ展

出版

2021 The Unseen 写真集 / フォルマーレ・ラ・ルーチェ発行

2007 – 2009 となりのニューヨーク(フォト&エッセイプロジェクト)高知新聞

2022-02-19 | Posted in 未分類Comments Closed