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EXHIBITION 11/18-30|林典子写真展「ヤズディの祈り」

林典子 写真展「ヤズディの祈り」
11/18(土)→ 11/30(木)


林典子写真展「ヤズディの祈り」を開催いたします。シリアとイラクの国境にほど近いシンガル山に、独自の宗教と文化を継承してきた民族、ヤズディ。2014年8月3日、突如ダーシュ(イスラム国)が村々を襲い、ヤズディの人々の暮らしはこの日から一変しました。女性達はダーシュ戦闘員たちと強制的に結婚させられ、子どもや老人たちは逃げ込んだ山中で衰弱し、男性達は集団で殺害されました。

命からがらヤズディの人たちが持ち出した家族や友人達との写真。大切なもの。彼らが体験した悲しみや苦難、暮らしと未来への想いは、他人事なのでしょうか。

出来事ではなく、その場に生きるひとりひとりに寄り添い共に生活を送りながら、林さんはこれまでも世界中で取材を行ってきました。静かに物語るヤズディの人々の姿を、是非ご高覧くださいませ。会期初日にはトークイベントを行います。皆さまのご来場を心よりお待ちしております。


ヤズディの祈り

青く美しい月夜にそびえる山。夜が明ける頃、この山の麓に暮らす住人の女性たちは、土窯で朝食用のパンを焼き始める。月が沈んで日が昇ると、山の住人は太陽に祈りを捧げ、羊飼いたちは羊の放牧へと出かけていく。

ここイラク北西部シリア国境沿いに東西に延びる、標高1463メートルのシンガル山では、何世紀にも渡り、自然と祈りが調和した人間の豊かな生活が営まれてきた。春には、山の麓の草原地帯が菜の花で染まり、住人たちは家族や友人と食べ物を持ち寄りピクニックに出かけ、夏の夜には流れ星を数えた。たくさんの果物や野菜が収穫できる秋には、多くのカップルが結婚式を挙げた。新婦は、豪華な純白のウエディングドレスと濃い化粧で粧い、村中の住人が新しい夫婦を祝福するために集まると、遠くに見えるシンガル山を背景に、青空の下で一日中ダンスを踊った。山が真っ白に染まる冬、子どもたちは雪合戦や雪だるまではしゃいで遊んだ。このシンガル山と周辺の村々で暮らす約30万人の人々は、ヤズディと呼ばれる中東の少数民族。この地域で、先祖から引き継いできた独自の信仰や伝統を守りながら暮らしてきた。

宗教的・民族的な少数派であるヤズディは、地球を創造した神「Xwede」(ホデ)を信仰する一神教。太陽を崇拝し、輪廻転生を信じている。その信仰はゾロアスター教、イスラム教、古代ペルシャの宗教、ミトラ信教、キリスト教などから影響を受け、口承で伝えられてきたと言われている。そのため伝説や起源についてもさまざまな異なる形で語られてきた。
2014年8月3日、シンガル山と周辺の村々がダーシュ(過激派組織IS)に攻撃された。住人である約5000人ものヤズディ教徒の男性や高齢の女性は集団で殺害、約6000人の若い女性は拘束され奴隷として戦闘員との結婚を強いられたと報道されている。ヤズディがダーシュの攻撃の対象とされる理由に、彼らの思想や価値観はイスラム教徒と異なり、ヤズディが信仰の対象とする孔雀天使はコーランに記されるシャイターン(悪魔)に重なるからだといわれている。 これまでのヤズディの歴史の中で何度も虐殺の対象とされてきた。

私は2015年2月からイラク北部とドイツを訪れ、故郷の村を追われたヤズディの人々の取材を始めた。今も故郷のシンガル山で避難生活を送る住人たち、美容師の夢を諦めて復讐のために兵士になった女性、一度はダーシュの戦闘員と結婚させられたが、その後脱出し今はドイツの高校へ通う少女たちなど……一人一人の存在や記憶の欠片を証言と共に記録し遺したいと思った。

ダーシュ の攻撃を受け、村から逃げる際に多くのヤズディが自宅から持ち出したのは思い出の写真。そこには私たち日本人と同じように友人や家族との平和な日常を愛する彼らの暮らしが映し出されている。

「中東の内戦」や「欧州の難民問題」など一時的なニュースの一部としてではなく、私たち一人一人と同じように個性ある人間であるヤズディの人々が、今後どのように信仰やアイデンティティーを未来へ引き継いでいくのかを想像していただけたらと願っている。  今も家族と共にシンガル山で避難生活を送り、2年前から取材をしてきたヤズディ教徒のファハドさんは、今年再会した際、別れ際にこうつぶやいた。「生き残った私たちの人生は、これからもずっと続いていくのです」

林 典子


 

EXHIBITION|
林典子写真展 「ヤズディの祈り」
[会期]2017年11月18日(土)- 30日(木)会期中無休
[時間]12:00-19:00/土日祝 10:00-19:00
[入場料]無料
[作家在廊日]11月18日(土
)- 23日(木・祝)

EVENT|
◎林典子 オープニングトーク
2017年11月18日(土)19:00〜20:30
参加費 1,000円(1ドリンク付)
ご予約はコチラ▷https://goo.gl/forms/KH5bAVTfM8JyiTry2
取材の当時の様子や制作時のお話。写真集刊行後の今も、イラクに戻る人々や、ドイツやアメリカの亡命先で暮らすヤズディの人々の生活を、取材をし続ける林さんにお話を伺います。是非、ご参加くださいませ。

PROFILE|

林 典子 
1983 年生まれ。大学在学中に、西アフリカ・ガンビアの地元新聞社、ザ・ポイント紙で写真を撮りはじめる。 「ニュースにならない人々の物語」を国内外で取材。米ワシントン・ポスト紙、独デア・シュピーゲル誌、仏ル・モンド紙、デイズ・ジャパン誌、米ニューズウィーク、マリ・クレール誌(英国版、ロシア版)など、数々のメディアで作品を発表。著書に、『フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳 ̶̶ いま、この世界の片隅で』(岩波書店)、『キルギスの誘拐結婚』(日経ナショナル ジオグラフィック社)、『ヤズディの祈り』(赤々舎)
林典子さんHP:http://norikohayashi.jp/

受賞歴
2011年 第7回名取洋之助写真賞
2012年 第8回DAYS 国際フォトジャーナリズム大賞1位
2013年 米アレクシア写真財団写真賞ファイナリスト、フランス世界報道写真祭「ビザ・プール・リマージュ」特集部門最高賞「ビザ・ドール(金賞)」
2014年 全米報道写真家協会(NPPA)「フォトジャーナリズム大賞」現代社会問題組写真部門1位
2016年 第16回三木淳賞受賞
2017年 第4回山本美香記念国際ジャーナリスト賞

BOOK|

林典子写真集『ヤズディの祈り』
出版社:赤々舎
価格:2800円+税
サイズ:A4変 並製 224ページ
デザイン:松本久木

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2017-10-28 | Posted in exhibition, newsComments Closed